浪人の僕恋をしたが

大学受験に失敗し、浪人を許されない僕は、仕方なく短大の夜間部に通うことになりました。「編入学や転入学という方法もあるから」という高校の先生の言葉に励まされ、とりあえず夜学にいくことになったのです。夜学といっても、僕の場合は他大学へ転入するという確かな目標がありましたから、回りの苦学生のように昼に働くということはしませんでした。
一応は転入試験のための勉強を進めていたのですが、これがあまりはかどらなかった。なんか受験生のときと比べて思うようにはいかなかったのですね。家にいても勉強が手につかないので、昼のほとんどの時間は短大の図書館で過ごしていました。特に勉強をするのでもなく、ただ気に入った本を片っ端から読んでいた。それで昼になれば学食で食事をし、夜には講義を受けて帰宅したのでした。
そんな生活を送っていたある日のことです。いつものように朝から図書館へ行っていますと、僕と同じ学科の女子学生がいました。教室ではいつも顔を合わせていましたから、気安く話しかけてきました。彼女もまた昼の時間にここへきて勉強をしていたらしいのです。まったく気付かなかった。
彼女は公認会計を目指していました。僕が通っていた学科は商学科です。学生のほとんどは税理士や公認会計士を目指していました。僕にはまったく興味がありませんでしたが。
それから僕は彼女と急速に仲良くなり、昼食はいつも二人で学食へ行きました。そんなふうに夏休みが近づいたある日、彼女の方から映画に行こうという誘いを受けたのでした。僕はもちろん、承諾しました。僕も前々から彼女のことが気になっていましたから、そのときのはとても嬉しかった。
デート当日、僕はかなりハイテンションになっていたのでしょう。映画を見てから食事をし、それからそのまま彼女のアパートへ行ってしまった。かなりお酒が入っていたこともあったでしょう。そのままアパートに泊まってしまったのでした。別にそこで何があったわけではなかったのですが、僕たちの間はそれを境にして急速に縮められた気がします。
そうして僕たちは一応はカップルになったわけですが、これがまたものすごく短い期間のカップルでした。夏が終わり、秋がやってきました。僕たちは再び昼には短大の図書館にいました。彼女は公認会計士の試験に向けて勉強しているのですが、僕の方は相変わらず小説なんかを読んで時間をツブしていました。
そんなあるとき、僕は今、自分がまったく本来の目標に向かって進んでいないことを今更ながらに感じたのでした。それは徐々に焦りになり、図書館通いも少なくなりました。そして、あるときキッパリと短大へも行かなくなってしまったのです。心配になった彼女は電話をかけてきてくれました。しかし、僕はまったくあの図書館へは行く気がしなく、とうとう短大を退学してしまったのです。
もちろん、彼女からはそれから何回か電話がありましたが、終いには居留守を使うまでになりました。どうしてか自分でも分かりません。ただ、彼女の公認会計士へ向けての真剣さが怖かったのでしょう。それに自分を比べてしまうことが。
以来、彼女とは会っていませんが、無事に目標を達成したのでしょうか。二十七年経った今も、それが気がかりでなりません。

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